Art in Business 研究会
Reference Guide

第6回「五節句にみる貴族の暮らしと遊び」
参考文献・関連資料

本ページでは、第6回アート・イン・ビジネス研究会「五節句にみる貴族の暮らしと遊び」で扱われた 旧暦と五節句、陰陽道、宮中行事、貴族の遊びと季節感をより深く理解するための 書籍・事典・ウェブ資料を整理する。季節と祈りと遊びが重なり合う世界観を手掛かりに、 ラグジュアリービジネスを考えるための読書ガイドとして構成している。

第6回 アート・イン・ビジネス研究会|テーマ:五節句にみる貴族の暮らしと遊び|講師:冷泉家時雨亭文庫 関連

1. 冷泉家・講師関連文献(王朝文化の入口)

まずは、第6回研究会の背景となる冷泉家・王朝文化全体の世界観に触れるための文献である。 五節句の細部を学ぶ前に、「王朝の暮らし」の大きな輪郭を掴むことを目的とする。

朝日新聞社編『冷泉家 王朝の和歌守展 冷泉家時雨亭叢書完結記念美術図録』2009年, 朝日新聞社
「冷泉家時雨亭叢書」全100巻完結を記念して開催された特別展に対応した展覧会公式図録(研究図録)

本書は、藤原定家を祖とする冷泉家が、約800年にわたり継承してきた和歌・古典文学資料の精華を、学術的解説と高精細図版によって提示する記念碑的図録である。 単なる美術図録ではなく、王朝文化・和歌史・書誌学・家学継承史を横断する、極めて学術性の高い資料集と位置づけられる。

冷泉家 年中行事 和歌と調度
新谷尚紀(監修)『和のしきたり: 日本の暦と年中行事 』2007年, 日本文芸社
教養書・文化理解のための標準的入門書

日本文化における暦(時間の区切り方)、年中行事(反復される儀礼・慣習)を通して、日本人の生活・信仰・社会秩序がいかに形成されてきたかを平易に解説する文化史・民俗学的解説書である。

王朝の一年 旧暦のリズム
※具体的な書名・著者名は、実際の配布資料や講師推薦リストと照合して更新する構成とすると使いやすい。

2. 五節句と年中行事に関する文献

五節句の歴史・意味・食・飾り物などを体系的に扱う文献である。 ラグジュアリービジネスから見れば、「季節を祝うためのデザイン・システム」として読むことが重要である。

京都府京都文化博物館学芸第一課編『季節を祝う 京の五節句 新春・雛祭・端午・七夕・重陽 [図録] 』2000年, 京都府京都文化博物館
京都文化博物館が2000年に開催した特別展「季節を祝う京の五節句」の公式図録。

この図録は、五節句(ごせっく)にまつわる季節行事を―歴史・文化・美術資料の側面から総合的に紹介する資料集である。 図版(絵画・工芸・人形・文書など)の掲載が豊富で、展示作品の視覚的把握とともに、習俗・暦意識・素材文化を理解するための解説が添えられている。 第6回研究会で取り上げられたモチーフの基礎を一冊で押さえることができる。

五節句概説 民俗学
福田アジオ(著)『知っておきたい日本の年中行事事典』2012年, 吉川弘文社
日本で一年を通じて行われる伝統行事、祭礼、しきたり、暦に基づく慣習を体系的にまとめた年中行事の総合事典。

日本の年中行事を網羅的に解説する事典である。 年中行事は、風習ではなく「生活に根ざした文化制度」であるという視点に立つ。年中行事を単なる昔の習慣、形式的な行事としてではなく、季節の変化への適応、 災厄回避と祈願、共同体の再確認、という社会的機能をもつ文化装置として説明している点に特徴がある。

年中行事 宮中と民間

3. 暦・陰陽道・季節感に関する文献

旧暦(太陰太陽暦)、二十四節気・雑節、陰陽五行など、五節句の背後にある時間観・世界観を扱う文献である。 「時間のラグジュアリー」を考える理論的基盤となる。

村山 修一(著)『日本陰陽道史話』2001年, 平凡社
日本における陰陽道の成立・展開・変容を、学術的厳密さを保ちつつも、「史話」形式で平易に語った名著である。

太陰太陽暦の仕組み、閏月の挿入、節気と雑節、陰陽道における方位・日取りの考え方などを解説する。 本書の大きな特徴は、厳密な史料研究を背景にしつつ、具体的な人物、宮廷の逸話、実際の行動規範を通じて語られる点にある。     これにより、陰陽道が「生きた知」として社会に機能していた様子が、読者に直感的に理解できる。 ラグジュアリーブランドが独自の「ブランド暦」を構想する際のヒントも多い。

暦法 陰陽道
山下景子(著)『二十四節気と七十二候の季節手帖』2013年, 成美堂出版
本書は、二十四節気と七十二候という日本の暦文化の中核を、専門知識を前提とせずに理解できるよう編集された、生活文化寄りの季節案内書である。

研究書ではないが、内容の正確性と表現の洗練度が高く、文化理解の導入書として評価が高い。 本書の最大の特徴は、二十四節気・七十二候を、暦の知識ではなく、「季節とともに生きるための言語」として提示している点にある。

二十四節気 七十二候

4. 貴族の暮らしと遊びに関する文献

若菜摘み・雛遊び・菖蒲打ち・七夕の歌会・重陽の宴など、 第6回研究会で紹介された貴族の「遊び」と「祈り」を具体的に描く文献である。

橋本義彦(著)『平安貴族』2020年, 平凡社
学術的水準の高い概説書

本書は、平安時代の貴族社会を、 政治史でも文学史でもなく、「社会の実態」から描き出した代表的著作である。天皇・摂関・上級貴族の制度的位置づけだけでなく、彼らがどのように暮らし、考え、振る舞っていたのかを、 史料に即して具体的に明らかにする点に特徴がある。

王朝の遊び 和歌と行事
川村裕子(編)『平安朝の文学と文化 紫式部とその時代』2024年, 武蔵野書院
平安朝(とくに紫式部周辺)を軸にした論文集であり、最前線の研究者25名による多角的な研究成果を収めた一冊である。

「紫式部とその時代」を核にしつつ、対象は『源氏物語』だけに限定されない。紫式部の著作群(物語・日記等)/同時代の政治・儀礼・装束・寺院空間/後代受容まで含め、文学と文化を“同一の場”で読む設計になっている。

源氏物語 物語と季節

5. 五節句の世界観をラグジュアリービジネスに接続するための文献・視点

五節句の世界観を「季節のラグジュアリー体験」として再解釈するために、 補助的に参照しうるラグジュアリー論・文化経済学の文献である。

(例)ラグジュアリーブランドの歴史・体験設計を論じるマーケティング文献
キーワード:ヘリテージ・ブランディング/エクスペリエンスデザイン/季節キャンペーン など

欧州メゾンの年中行事的イベント(ホリデーシーズン・クルーズコレクション・限定ポップアップなど)を扱う文献と、 五節句を対比させながら読むことで、「季節をいかにブランドの物語として組み込むか」という視点が得られる。

ラグジュアリー論 体験設計
文化経済学・クリエイティブツーリズムに関する文献
キーワード:文化資本/文化的暦/季節観光・祭礼観光 など

祭礼・年中行事を観光資源・文化資本として捉える研究群である。 五節句に着想を得た「季節のラグジュアリー・ツーリズム」や、「ブランド独自の節句」の設計に応用しうる。

文化経済学 季節観光

6. 読書ガイド――どこから読み始めるか

〔ステップ1〕王朝の季節感全体をつかむ

  • 冷泉家・王朝文化全体を扱う概説書(第1節)を通読し、「光と季節のリズム」を感覚的に掴む。
  • 第6回研究会の要約と照合しながら、「どの場面がどの行事に対応するか」をメモする。

〔ステップ2〕五節句それぞれの意味と歴史を押さえる

  • 『五節句のはなし』や年中行事事典で、人日・上巳・端午・七夕・重陽それぞれの由来と変遷を確認する。
  • 宮中での姿と、武家・町人における受容の違いに注意を向ける。

〔ステップ3〕暦と陰陽道の視点から時間のデザインを理解する

  • 暦・陰陽道に関する概説書で、五節句の背後にある数理・世界観を学ぶ。
  • 二十四節気・七十二候の本で、「五節句の前後の季節のグラデーション」を意識する。

〔ステップ4〕貴族の遊びとラグジュアリービジネスへの接続を考える

  • 貴族の遊び・源氏物語関連の文献を読み、「季節を遊ぶ」具体的なシーンをイメージする。
  • ラグジュアリー論・文化経済学の文献と対読し、自身のブランドやビジネスにおける 「現代の五節句」や「ブランド暦」を構想してみる。
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