1. 上賀茂神社を知るための基本文献
上賀茂神社の由緒や境内の構成、葵祭をはじめとする年中行事を、 写真とともにわかりやすく解説した公式ガイドブックである。 研究会で触れられたトピックの多くをカバーしており、最初の一冊として推奨できる。
・上賀茂神社社務所および山代印刷のウェブサイトから入手可能。
・一般向けであるが、研究の基礎情報としても有用である。
上賀茂神社および周辺地域を対象とした成果報告書であり、 年中行事書の分析、葵使・葵祭、社家町の景観など、神社と地域社会の関係を多角的に扱っている。
・一冊全体として、上賀茂神社をめぐる最新の地域史研究のスタートラインを把握するのに適している。
2. 葵祭・祭礼をめぐる研究文献
平安朝廷との関係のなかで賀茂祭(葵祭)がどのように形成・変容していったかを、
史料に基づいて検討した論文である。
平安期を視野に入れた制度史的理解に有用であり、葵祭の「国家的行事」としての性格を把握することができる。
・帝塚山大学のリポジトリ等からPDFで閲覧可能な場合がある。
葵祭や賀茂競馬などで用いられるフタバアオイ、カツラ、ショウブ、ヨモギなどの植物に焦点をあて、
賀茂社の祭礼文化を読み解く論考である。
「葵」と「逢ふ」の語呂、神紋としての二葉葵など、祭礼の象徴世界を理解するうえで重要である。
・賀茂県主同族会の出版物としてPDF公開されている号もある。
元禄七年の御蔭祭・賀茂祭再興を事例に、近世における賀茂社の祭祀組織のあり方とその変容を検討した研究である。
「再興」という視点から、祭礼が政治・社会状況とどのように連動しつつ維持されてきたかを読み取ることができる。
・国学院大学のリポジトリ等で要旨・本文が公開されている場合がある。
賀茂競馬・葵祭再興記・氏人文書翻刻など、上賀茂社にかかわる一次史料の紹介と解題が多数収録されている。
祭礼を実務レベルで担ってきた氏人の視点を知ることができ、研究会テーマ「伝統産業の源流」に直結する資料群である。
・賀茂県主同族会のウェブサイトから目次・PDFが公開されている号もある。
3. 史料集・一次資料
国の重要文化財に指定された約14,000点の賀茂別雷神社文書を翻刻・編纂する長期プロジェクトである。
「賀茂神主経久記」「氏人置文」「氏人花押」「氏人相論」など、神社運営・氏人社会・訴訟・祭礼の実態を示す史料を体系的に収録する。
・本格的な研究には必携のシリーズであり、順次刊行中である。
・上賀茂神社社務所および出版社ウェブサイトから購入可能。
鎌倉時代後期の神主・賀茂経久による自筆記録群であり、中世の賀茂社の祭祀・経済・人事などを知ることができる。
近世以前の上賀茂神社の姿を復元するうえで重要な一次史料である。
・『賀茂別雷神社史料』の一部として刊行。
・神社史・中世宗教史の研究者向けの内容であるが、関心のある受講者にとっても貴重な参照先となる。
4. 文献目録と研究ガイド
上賀茂神社・下鴨神社(賀茂御祖神社)に関する既刊研究を主題別に整理した文献目録である。
賀茂社研究の全体像を俯瞰し、特定テーマ(氏人、祭礼、景観、近代以降など)に関する文献を探す際の出発点として極めて有用である。
・研究会のテーマに沿って個々の文献を深掘りする際、まずこの目録で全体を押さえることが推奨される。
研究者有志によって運営されている上賀茂・下鴨関係文献のオンラインリストも存在し、
新しい論文・書籍の情報を補完している。
逐次的に更新されるため、最新の文献動向を把握する際に参考となる。
・アクセスURLは研究会資料または担当教員から案内されることを想定している。
5. オンラインで読める解説・資料
以下は、一般向けでありながら内容が充実しており、研究会での理解を補完するオンラインリソースである。 授業・ゼミでの予習復習や、現地見学の前後に参照すると有益である。
葵祭の歴史・行列の構成・祭の進行などを、写真とともに解説したページである。 賀茂御祖神社(下鴨神社)と賀茂別雷神社(上賀茂神社)の両社がどのように関わるかを概観できる。
例:京都観光Navi(公式サイト) 内「葵祭」ページを参照。
上賀茂神社の由緒・祭礼・文化財に関する基本情報に加え、 本ページで紹介した『上賀茂神社へのいざない』や『賀茂別雷神社史料』シリーズなど、 神社が刊行する公式出版物の情報がまとめられている。
・研究会後も継続的に情報をアップデートする「入口」として活用できる。
6. おわりに ― 研究会から文献世界へ
第3回アートインビジネス研究会では、上賀茂神社の歴史・葵祭・幕末の和宮降嫁・
現代の修復事業と財政交渉など、多様な側面から「伝統産業の源流」が語られた。
本ページで紹介した文献は、それぞれが講演内容の一部をより専門的に掘り下げる手がかりとなるものであり、
共同研究や卒業論文、地域連携プロジェクトの発展にも資するであろう。
関心のあるテーマごとに一冊・一論文から読み進め、「現場の知」と「学術研究」とを往復しながら、 伝統文化とビジネスの新たな接続可能性を探っていきたい。